次代を担う 意気!域!農業人(はるんちゅ)糸満市・島袋幸光さん

2019.05.01

 

夜明け前の畑へ、今日も赴く。

覚悟を決めて前進あるのみ。ストレリチアに一生懸命。

 

30代は自分が何をしたいのかわからず、挫折も味わった。後には引けない覚悟で挑んだ農業には一切の妥協を許さず、思い立ったら即行動。営農指導員の丁寧な指導の下、より高品質のストレリチア栽培を目指す、熱い農業人。

 

収穫前のストレリチア

南山グスクのお膝元の極楽鳥花

 JA糸満支店から県道7号線を平和祈念公園向けに走ると、大里集落が広がる。豊富な水量で有名な嘉手志川のそばにある集落は、古くから2年に1度、旧暦六月に五穀豊穣を祈願して大綱引きが行われ、新しい令和の世にもその伝統が連綿と受け継がれている。この地でストレリチアを栽培している島袋幸光さん(49歳)を訪ねた。

 花の形が極楽鳥のようだというので、別名極楽鳥花とも呼ばれるストレリチアは、今にも飛び立ちそうに頭をもたげていた。

 幸光さんは、あいさつもそこそこに「話したいことが山ほどあって」と、びっしりと書かれた手帳を片手にストレリチアの栽培に至るまでのいきさつを語り出した。

 

JA営農指導員と密に連携しています

20代〜30代は試行錯誤の繰り返し

 23歳から約10年、妻・礼子さん(49歳)の実家のバイク店の経営に携わり、それから2年ほど健康食品の卸店に勤めていた。

 サトウキビを作っていた父・幸雄さん(82歳)の引退を機に実家のサトウキビ畑を引き継いだのが農家となったきっかけだった。

 36歳の時に「ちょうど健康食ブームでウコンが脚光を浴びていたので、思い立って、農業法人を一人で立ち上げました。農産物の生産加工と販売がしたかったのですが、一人では思うように活動できず、自分はいったい何がしたいのか、自問自答の日々でした」

 結局、立ち上げて2年後、会社は知人に譲ることになった。その後、約5000坪(1.6ヘクタール)のほ場でサトウキビを作り、その傍らヘチマやトウガンなど季節の野菜を作りつつ、情熱を傾けられる何かを探していた幸光さん。ここでさらに思い切った行動に出た。

 「もう後に退けない、という状況を作りたかったので、新車のトラクターの購入を含め、総額700万円の設備投資をしたんです。農業はお金がかかります。自然相手の仕事ですから、自前の機械がないと適切な時期に適切な作業ができない」

 こうして後には引けない立場となった幸光さんのところに、ついに求めていたものが向こうからやってきた。

 「40歳のとき、地元糸満で高嶺農協(当時)の組合長をしていた叔父で故・安里徳一さんが、ストレリチアをやらないか、と声をかけてくれたんです。体調を崩して、もう続けられないので、ということでした」

 20年株のストレリチアが600坪(20アール)のほ場を引き継いだ幸光さんは、以後、夢中で突っ走ることになる。

 ストレリチアは台風に強く、年中収穫できるところが魅力の品目である。管理をしっかりすれば、1つの株で何十年も収穫が可能だという。台風対策は、通過前後に殺菌剤を撒くのが通例だが、幸光さんは周りにドラセナを植えて風除けとする徹底ぶりだ。 しかし大失敗したこともあるようで、

 「栽培面積を広げようと初めて株分けをしたとき、自己流で植え付けしたら、見事に半分以上枯れてしまった。そんなとき、手取り足取り教えてくれたのが営農指導員の金城亮一さんでした。株分けはもちろん、ユンボの手配、殺菌方法、肥培管理などすべて指導していただいた」

 JAの営農指導員との出逢いが、幸光さんの栽培をうまく軌道に乗せたのである。

 

シーズンになると選果場も大忙しとなる

津嘉山支店のストレリチア

 幸光さんは、叔父の勧めもあって、当初からJA津嘉山支店の花卉生産部会に加入している。南風原町はストレリチアの拠点産地であり、共撰施設があるので、選別や箱詰めなどの作業を任せることができる。その分、畑の作業に集中できるので助かっているという。

 こうしてあっという間に8年が経過した。その間、計画的な植え替えを行うことで、現在2100坪(70アール)の畑で年中安定して収穫している。毎日、3時に起床して、夜明け前には畑に出るという。収穫をして、9時には出荷場へ持っていき、それからが本来の仕事、と言い切る。一日で多いときには400本、年間7万本を出荷している。

 徹底的に管理されたストレリチアの品質は、花き品評会で平成27年~29年まで3年連続で金賞を受賞する快挙を成し遂げた。

 

収穫・管理作業に余念がない

感謝を胸にストレリチアを咲かす

 「ストレリチアを始めてから、友人との模合など酒席からは遠ざかっています。明日に備えて8時には就寝、という生活です。農業は朝が肝心です。朝が遅いと一日の段取りが悪くなりますから」

 農業に捧げる情熱は並大抵ではない。

 「農業は手をかけた分、応えてくれる。その辺にやりがいを感じます。一人では現在の規模が限界です。この規模でよりよい品質のストレリチアを作っていきたい。今、こうして農業に情熱を傾けることができるのは、ストレリチアを勧めてくれた叔父と、勉強会などで情報を共有できる部会があるからです」

 探し求めていたものをようやく見つけ、これからもこの道をまっしぐらに進んでいくに違いない幸光さん、「農業は必死です」と真剣に応える姿に、エールを贈らずにはいられない。

 

 

JA担当者の声

南部地区営農振興センター
 農産部野菜果実指導課 金城 亮一

研究熱心で、営農指導員と連携しておこなう栽培試験にも積極的に協力してもらっています。肥培管理も徹底していて、ストレリチアだけでなく、サトウキビや季節野菜の栽培においても妥協しません。

 

JAおきなわ広報誌:あじまぁ

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