次代を担う 意気!域!農業人(はるんちゅ)

2016.04.01

 

若い力で恩納村の農業を盛り上げたい。

パッションフルーツに情熱を注ぐ。

根っからの農業大好き人。父の手伝いでパッションフルーツと出会い、自らも魅せられていった。以来、向き合い続けて18年。今号は一大産地恩納村をさらに盛り上げようと、パッションフルーツ栽培への溢れるパッション(情熱)にみなぎる農業人を紹介。

 

恩納岳のふもとに立つハウス

一つ一つ、丁寧に収穫する

 天気は晴れ。春の日差しの中、沖縄自動車道から恩納村へ向かう。ここはリゾートエリアの恩納地区。トンネルを抜けると、煌めくブルーの東シナ海が出迎えてくれた。

 今回の品目は、パッションフルーツ。なだらかな緑の稜線に、恩納バイパスの高架橋が交差して美しい風景をつくる恩納岳のふもとに、目的のビニールハウスがあった。

 取材陣が到着すると、ハウスの前で出迎えてくれたのは、端正な顔立ちの大城保寿さん(41歳)。JA恩納支店熱帯果樹部会の部会員だ。

 「けっこうな人数ですね」

 と取材陣の多さにとまどいつつも、笑顔でパッションフルーツがたわわに実ったハウスに招き入れてくれた。

 

 

 

 

味と香りがパッションの魅力

果実は自然に落下するので傷つき防止用のネットを張る

 「パッションフツールは香りと味が魅力。直感的にいけると思いましたね」

 小さいころから、スイカやトマトなど園芸本を見ながら作っていた保寿さん。パッションフルーツとの出会いは、父保繁さん(81歳)が定年後に始めた栽培を手伝ったのがきっかけだった。

 この地でパッションフルーツの栽培が始まったのは約20年前。役場OBらが定年後、楽しみながら栽培できる品目として導入したのだそうだ。当時、パッションフルーツは県内でも珍しく、保寿さん自身も見たことも食べたこともなかった。

 「食べた瞬間、何とも言えない味と香りが口中に広がった。将来性がある果物だと実感しましたね」

 大学では観光産業を専攻していたが、卒業後は迷わず就農。今や、栽培歴18年のベテランだ。

 「始めた当初は、苦労の連続でした。一生懸命作っても全く売れなかった。それでもやめたいと思ったことは一度もない」

 と明るく笑い飛ばす。

 

産地で一致団結、こだわりの栽培方法

山城指導員と生育状況をチェック

 しばらくはバイトを掛け持ちして、なんとか食いつないでいた保寿さん。軌道に乗り始めたのは5年後だった。

 志喜屋文康前村長の時代に、園芸施設を広範囲に渡り導入したことや県内外における販促活動の実施をはじめ、栽培技術の向上に産地一丸となって取り組んだことが功を奏し、産地の知名度も上昇。

 平成17年には県の拠点産地に認定、さらに平成20年には、農薬と化学肥料の窒素成分量を県の定めた数値の半分以下に減らしているとして、村産パッションフルーツが県の特別栽培農産物に認定された。

 

 今では、部会員29人が、年間20トンほどを県内外に出荷。恩納村農業経営アドバイザーやJA指導員に土壌診断に基づいた施肥設計をしてもらい、堆肥や有機質肥料をふんだんに使った土づくりを実施、病害虫に強い丈夫な樹体に育て上げ、低農薬栽培を実践している。

 

収穫できた時が一番嬉しい

花ひとつひとつに授粉作業をする

 そんな保寿さんもJAの営農指導員をしていた叔父の保昭さん(76歳)や部会の先輩方などの支援を受け、今ではスタート時の10倍にあたる約17アール(500坪)のハウスにパッションフルーツを約100本育てている。

 収穫時期は年に2期。1月から3月までと5月から7月までだ。

 収穫が終わると土づくりを行う。8月前半に苗を定植し、10月頃からは花が咲き始め、多いときには1日1000個の花がつくこともあるそうだ。人工授粉なので、それらの花がしぼまないその日のうちに手作業で交配していく。

 「ようやく収穫に漕ぎつけたときが一番嬉しいけれど、授粉作業や夜中までかかる箱詰めがつらい(笑)」

 とは言いつつも、作業自体を楽しむ保寿さんの余裕の笑みが見える。

 

パッションフルーツへの情熱が産地を守る

化粧箱に入ったパッションフルーツ

 部会の目下の課題は後継者育成。

 「せっかくここまで産地としての地位を築いてきたのだから、若い担い手を増やしたい」

 大抵の果樹は収穫までに4、5年はかかるが、パッションフルーツは1年で収穫できる。

 保寿さんはその魅力を伝えるべく、農業大学校の学生をハウスに招き、視察研修を行うなど奮闘中だ。

 「力になってくれた周囲への感謝も込めて、今まで学んできたノウハウを若い担い手に伝え、もっともっと産地を盛り上げていきたい」

 将来を見つめる保寿さんの引き締まった顔は、パッションフルーツへの溢れるパッション(情熱)にみなぎっていた。

 

JA担当者の声

 

北部地区営農振興センター
山城 好一朗

保寿さんとはかれこれ10年の付き合いです。勉強家で、自分の考えをしっかり持っていて、それを発信する力を持っている方です。

 

 

JAおきなわ広報誌:あじまぁ

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