次代を担う 意気!域!農業人(はるんちゅ)伊江村・儀間幸太さん

2017.05.01

 

島外で芽生えた「島ラッキョウ」への思い。

17歳で思い描いた可能性、感じる確かな手応え。

植え付けから収穫、出荷まで全ての作業を一人でこなす。丹念な草とり、出荷前の薄皮むきと手間を惜しまない。今号の農業人は、つなぎ姿に足袋の軽快なスタイルに、農業用フォークがよく似合う伊江島期待のホープを紹介。

 

島ラッキョウの里「伊江島」

 

島ラッキョウ畑と伊江島タッチュー

 本部港から30分足らずで伊江港に到着。船を降りると「伊江島和牛」の像と島のシンボルである城山(タッチュー)が取材陣を出迎えた。
 今回の取材先は島の西部、西崎区。収穫後のサトウキビ畑は見晴らしがよく、もうすぐ収穫を迎える葉タバコも青々と広がり、その一角に、薄緑色の島ラッキョウ畑がまっすぐに何列も伸びていた。平成25年に「島ラッキョウの里」を宣言した伊江島は、県内唯一の島ラッキョウ拠点産地である。
 ふかふかの土に緑色の島ラッキョウが整然と並ぶ畑の中から明るい声が聞こえる。
 「ちょっと待ってね。今、細かな草を抜いていたから」
 笑顔で現れたのは、儀間幸太さん(28歳)。島ラッキョウを作り始めて5年という、つなぎ姿に足袋、筋肉質で小麦色の肌。絵に描いたような農業青年だ。

 

那覇で感じた島ラッキョウの可能性

植え付け用の球根をつくる

 幸太さんの島ラッキョウを作るきっかけが面白い。
 「中学まで島で育ち、那覇商業高校へ進学しました。17歳のある日、国際通りで見かけたんです。至るところで見かけるようになった観光客が、島ラッキョウを大量に買っていたんですよ。『これだ』と思いましたね」
 就農への固い決意を胸に、22歳で島に帰った幸太さん。最初は1・65アールで島ラッキョウを栽培。少しずつ面積を増やし、今や40アール、年々出荷量を増やし続けている島期待のラッキョウ農家だ。
 「島ラッキョウは深植えをして、茎の部分を白く柔らかくして食べやすくします。伊江島の水はけのよい島尻マージが向いているんです」
 ミネラルやカルシウムを含む豊潤な畑で育つ島ラッキョウは、「伊江島の島ラッキョウ」として名を馳せている。
 「翌年植え付ける球根は前の年に収穫し、冷蔵庫で保管しておきます。いい島ラッキョウをつくるには、いい球根を使うことが大事ですから」
 目の前の出荷だけではなく、翌年を見据えて良質な球根を確保し、計画的な生産を心がけている。
 そんな幸太さんのこだわりは、島ラッキョウの薄皮をむいて出荷すること。取材の合間に収穫したばかりの島ラッキョウを器用にむいてくれた。土まみれの島ラッキョウが、あっという間につやつやのべっぴん島ラッキョウになった。
 「草とりも皮むきも難儀と思ったことはありません。はまりますよ(笑)」
 収穫までの相当な草とり量、一つひとつ行う細かい皮むきの作業、幸太さんは涼しい顔でこなす。

 

行動あるのみ、島ラッキョウの販売

花と食のフェスティバルで金賞受賞

 畑にはわずかな雑草も見られないほど、手間を惜しまない幸太さんは、自ら育てた島ラッキョウへの愛着もひとしおである。
 「数年前、島ラッキョウの価格が暴落したときには、軽トラックに100キロの島ラッキョウを積んで、フェリーに乗り込み、那覇近辺の居酒屋に飛び込みで売って回りました。どの店も、『伊江島からわざわざ来たのか』と優しく対応してくれて、今でもその時の縁で居酒屋などに卸しています。うまくいくか笑われるか、覚悟を決めた行動でしたね」
 幸太さんの行動力と熱意が、周囲の人の温かい応援へと変わった。
 自ら出品を希望した今年の花と食のフェスティバルでは、見事金賞を受賞。特別賞の県町村会長賞も受賞した。
 「今の時代、品質が良いのは当たり前、見栄えもきれいにしたい」
 その発言に、幸太さんの生産農家としてのプライドが垣間見える。

 

 

負けたくないし、学び続けたい

知念指導員と生育状況の確認

 JA伊江支店園芸生産組合らっきょう生産部会では最年少の幸太さんだが、その姿勢は謙虚で貪欲だ。
 「農家が100人いれば、100人の考え方があると思います。先輩方の良いところをたくさん盗んで、自分の農業に取り入れていきたいですね」
 真面目に語りながらも、時折見せる笑顔が爽やかな幸太さん。今後の目標を聞いてみた。
 「島には葉タバコ農家や菊農家など、同世代の農家もいますが、負けたくないですね。人生勝負じゃないけど、皆で刺激し合って、一流の農家を目指したいです」
 なりたい姿をハキハキと語る表情は頼もしい。幸太さんが作る「島ラッキョウ」は、これからも「島ヤサイ」の代表格として輝き続けるに違いない。

 

 

 

 

JA担当者の声

伊江支店

経済部営農課

知念寿一

 年齢は若いのですが、腰を据えて農業に取り組んでいます。部会では先輩を立てつつ、自分の意見をきちんと言う。伊江村の農業発展の為に頑張っています。

 

 

JAおきなわ広報誌:あじまぁ

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