光、水、気温、すべてに目配りをして、品質を追求。
マンゴー園を情報収集と独自の工夫でこなす。
父・秀晴さんから手ほどきを受け、マンゴーづくりの魅力にはまった篤史さん。一年かけて手塩にかけたマンゴーが、今年もハウスいっぱいに赤々と色づくこの時期。出来映えに自信がみなぎる。6年目にしてすでに巧者の貫禄を持つ農業人!

収穫間際のマンゴーハウス
うるま市石川の石川川沿いからほど近く、車一台がやっと通れるほどの農道を進むと、真新しいビニールハウス2棟(各4連棟・5連棟)が現れた。
今号の主人公・高江篤史(45歳)さんは、麦わら帽子を被って軽快に登場。取材陣をさっそくビニールハウス内に招き入れてくれた。
袋掛けをされた、重たげなマンゴーが1つずつ丁寧に吊られ、ハウス内は出荷前の静かな華やぎを見せている。すっと伸びた誘因の紐や、きゅっと包まれた袋掛けマンゴーが行儀よく並んでいるさまは「整然」という表現がぴったりである。

一人でこなすマンゴーづくり
本土でずっと仕事をして、沖縄に帰ってくることになった。農業をやる、というのは頭になかったそうで、父・秀晴さん(73歳)のマンゴーづくりを手伝っているうちに興味が湧いた。マンゴー農家になるとは、本人にとっても思いがけない展開だったという。
父・秀晴さんからうるま市塩屋にある200坪(7アール)のマンゴー園を譲り受けて、2013年に独立した。当初は、花が咲かなかった年もあり、失敗だらけだったそうだ。
2016年に国と県の補助事業で、うるま市石川の地に700坪(23アール)のビニールハウスを建てた。
「全て(30アール)を一人で見るのは大変です。自然の温度で育てると収穫時期が重なるので、ハウスにはボイラーを入れて、調整しています」
着果期のボイラー使用で、6月の下旬から7月の下旬まで一ヶ月かけて収穫することができるようになった。
今期のマンゴーはいつも以上によい出来で、約4100個の収穫を見込んでいる。
手塩にかけたこだわりのマンゴー

篤史さんに栽培の工夫を尋ねると、
「日焼け防止の袋掛けをぎりぎりまで遅らせました。ハーレー鉦が鳴る前(旧暦5月4日[ユッカヌヒー])に袋掛けする方が良いとされていますが、できるだけ色が乗った真っ赤なマンゴーにしたいので」
マンゴーが日焼けをすると、糖度が乗らなくなるそうで、
「失敗して何個もダメにしました。しかし、全体的に色乗りが良い仕上がりとなっていますよ」
周りのアドバイスをうのみにすることなく、あえて何でも挑戦してみるという篤史さん、なかなかのチャレンジャーである。
品質のよいマンゴーを栽培する上で、もっとも気を遣う作業が水管理だという。
「水やりはスプリンクラーで行いますが、毎日天候を見ながら水量を調節します。一回にあげる量を少なくし、こまめに与えるようにしています。量が多いと表土に湿気がこもってしまうので」
「手塩にかけて」という言葉がぴったりのマンゴーづくりである。
7月に収穫が済むと、土に肥料を入れてねぎらい、夏の終わりにはまっすぐに出てくる芽を横に倒す作業に追われる。木の高さを低くするのは、
「作業がしやすいのと、マンゴーにまんべんなく光が当たるようにするためです」
花が咲く時から光を当てた方が果実の色乗りがよくなるそうで、マンゴーという作物の繊細さが伝わってくる。

一個一個の秀品率を上げたい
篤史さんの情報収集はもっぱら、マンゴー部会の若手の面々。JA具志川支店の部会あり、中部地区の仲間あり、で情報源には事欠かない。
「中部地区には年齢が僕より若いけれど、マンゴー歴では先輩という若手がたくさんいます。飲み会をしながら楽しく情報共有しています」
袋掛けの袋に通気性をよくするための穴を開けるというのは、部会での情報収集の成果だ。
「業者に穴あけまでお願いしています。品質の安定につながるということで、結果を楽しみにしています」
2018年度の沖縄県マンゴーコンテストでは、栽培して5年未満の生産者が対象という新人賞を受賞した。
「今年は?」と聞いてみると、
「ぜひ出品したいですが、みんなもいいものを作っていますからね。でも、いずれは金賞を狙ってみたい」
受賞への強い意欲が伺える。
最後に、今後の目標を聞いてみた。
「この規模を維持して、一個一個の秀品率を上げることです」
静かに闘志を燃やす篤史さんの姿は、マンゴーづくりの自信に満ちていた。
JA担当者の声
中部地区営農振興センター
農産部 野菜果実指導課 本部 紹太郎
真面目で、作業がていねいで、肥培管理も徹底しています。マンゴー農家の仲間との交流も大切にしていて、情報収集のアンテナを常に張り巡らせています。チャレンジ精神も旺盛です。
JAおきなわ広報誌:あじまぁ
地域で頑張る農家を紹介する「農業人(はるんちゅ)」はあじまぁに掲載されています。
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