次代を担う 意気!域!農業人(はるんちゅ)

2016.10.01

 

畜産の島としての未来を常に考えている。

受け継いだ牧場を母と二人三脚できりもりする。

「赤ちゃんの頃から牧草に寝かされていました」と屈託のない笑顔で話すテンガロンハットが似合う青年。本格的に就農して12年。受け継いだ牧場の飼養規模は倍近くになった。今号は、人が好きで牛が好き、一族の絆を大切にする多良間島のカウボーイ農業人を紹介。

 

ゆったりとした島の広大な牧場

広々とした放牧場

 

 宮古空港を飛び立ったプロペラ機が大海原を20分ほど飛行したかと思うと、眼下に丸く平たい島がみるみる迫り、青々と伸びるサトウキビや野原を駆け回る牛の群れが見えてきた。

 目指すは多良間島。どうやら畜産とサトウキビの島のようだ。

 多良間島は、ほぼ全域が県立自然公園に指定されている。人口は1100人余り。牛はその倍近くいるという。

 多良間空港から向かったのは、空港からほど近い場所にある湧川牧場。

 「牛たちも待っていましたよ」

 屈託のない笑顔で出迎えてくれたのは今号の農業人、湧川農さん(32歳)。テンガロンハットが似合う多良間島のカウボーイという感じ。その後ろから母和子さん(67歳)や妻多絵さん(39歳)、四男の葉生くん(5か月)も現れた。

 農さんは、島の畜産農家でも一番の若手。経営規模は母牛180頭、年7回ある多良間家畜市場のセリには、9カ月ほど育てた子牛を毎回20頭ほど出荷しているそうだ。

 

農業が大好きな「農さん」

多良間支店の知念さんとは昔馴染みだ

 農さんは9人兄弟の末っ子の三男。父朝教さん(76歳)はもともと馬の蹄鉄工で、40年ほど前から和牛繁殖を始めた。

 「生まれたての頃、両親の作業中は牧草に寝かされていたと聞いています」

 小さいころから周りに牛がいる環境で育った農さん。名前に込められた想いもあり、後を継ぐのも自然の成り行きだった。

 宮古工業高校では溶接や機械の扱い方を学び、卒業後は県立農大で畜産を専攻した農さん。農大在学中には家畜人工授精師の資格も取得した。

 卒業後は島に戻って本格的に就農。今では日々餌やりから牛糞の片付けはもちろん、牛舎の柵の溶接から修理、電気配管まで自らの手で行う。

 

一族全員で祝ったサプライズ金婚式

両親の金婚式で集まった一族

 妻多絵さん曰く、農さんは”人を楽しませることが好きな人。そのためには妥協しない “とのこと。

 今年の夏、多絵さんと一緒に両親の金婚式をサプライズで企画。県内外にいる兄や姉たち家族を招待して盛大に祝った。引退した父と、今も農さんと二人三脚で牛の世話をしてくれる母への感謝の気持を表したかったという。

 「生まれた頃には一番上の兄は既に独立していました。この島で、一回でも一族皆で集まる機会を作りたかったんですね」

 金婚式に向け、蹄鉄をかたどった記念指輪を作成。また、牛舎小屋の壁に蹄鉄を花に見立てて貼付け、そこにそれぞれの家族全員の手形を押して一族の絆を表した。

 

 「両親への恩返しのため、どうしても牛舎で金婚式がしたかったんです」

 そう話す農さん。母和子さんも嬉しそうにうなずく。

 

「わ」を大事に島の未来を考える

一族お揃いのポロシャツを着て日々の農作業に励む

 年6~8回ほど牧草が取れるという温暖な気候を活かし、粗飼料は全て自前。子牛価格も好調で経営は安定しているが、振り返ると決して順風満帆ではなかった。

 7~8年前に餌代やミルク代が軒並み高騰するなど、苦しい時代を味わった農さんは、宮古和牛改良組合多良間支部の仲間たちと島の農業の将来像を語りながら、お互いに支え合い今まで必死に耐えてきた。

 そんな農さんも多絵さんと結婚し、4人の子どもにも恵まれた。

 「今では、小学生の長男晴世くん(6歳)も率先して手伝ってくれる。将来は子どもたちに和牛ブランド化にも挑戦してほしい。その為の地盤作りには全力で取り組む」

 両親が残してくれた牧場に感謝しながらも、規模拡大など日々努力の連続だ。

 仕事中、農さんや母和子さんが着用するのは一族お揃いのポロシャツ。背に書かれた「わ」は、和牛の「わ」、湧川の「わ」、母和子さんの「わ」、家族の輪の「わ」などいろんな意味が込められているそうだ。

 餌時には農さんが「おーい」と呼ぶと、牛たちが次々と集まってくる。「わ」を大事にする農さんは牛との絆も深かった。

 

母の声

湧川和子さん

素直な子でなんでも相談できます。牧場経営の機械化に積極的に取り組んでいるので、私もできる限り応援していきたいです。

 

 

JA担当者の声

多良間支店経済課

知念博正

農さんが小さいころから知っています。エネルギッシュでスポーツマン、多良間の八月踊では獅子舞を担当し、島のリーダーとしても期待されています。

 

 

 

JAおきなわ広報誌:あじまぁ

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