次代を担う 意気!域!農業人(はるんちゅ)

2016.05.01

 

家族と団結して農業の可能性を追求。

トルコギキョウに魅力を感じ、生産に全力を注ぐ。

農業に打ち込む父の背中を見て、ゆくゆくは後を継ぎたいと考えていた。達人である父のもと、兄に続いて、農業への道を選んだ宮平家の二男坊は、独り立ちしトルコギキョウ生産に取り組む。目指すは沖縄一。今号は、沖縄農業の可能性を信じる若き農業人を紹介。

 

魅力あるトルコギキョウ栽培

農業の師である父聰さん、大城指導員も見守る

 国道331号線から、奥武島に向かい緩やかに下っていく。そこからアスファルトで舗装された農道に入ると、真新しいビニールハウスが見えてきた。

 ここは南城市玉城。露地畑やハウスが途切れることなく広がる風景が、この地が豊かな農業地帯であることを教えてくれる。

 ハウスの前で出迎えてくれたのは、今号の農業人、宮平渉さん(31歳)。あごひげに少し長めのヘアスタイル。第一印象は職人のようだ。

 真新しいハウス内には、出荷前のつぼみがたくさん見える。生産規模は、ハウス11棟で約20㌃(約600坪)。初年度は4万2000本定植したそうだ。

 「今年から独り立ちして、トルコギキョウを作っています。冠婚葬祭で需要があるので、将来性を感じますね」

 開口一番、トルコギキョウの魅力を語っていると、農業の師であり達人でもある、父聰さん(61歳)がハウスへ到着した。

 

父の背中を見て就農を決意

 北アメリカ原産のトルコギキョウは、日本で品種改良され、華やかな中にも清楚な趣きが人気の花だ。冠婚葬祭用として周年通して需要があるため、沖縄では台湾産と本土産の端境期となる12月から5月「母の日」までに照準を当てて生産している。

 「父がオクラや小菊、サヤインゲンなどを作っていて、中学生のころから選別作業や台風の後片付けをしているうちに、ゆくゆくは継ぎたいと思いましたね」

 名桜大学に入学したものの、農業という夢に向け、農業大学校に入学。農大卒業後は、県農業研究センターでも勉強し、着実に力を付けてきた。

 「農大では、良い環境で改めて農業の基礎から学びました」

 と渉さん。

トルコギキョウは華やかな中にも清楚な趣きが人気の花だ

 「親として後を継いでくれるのは嬉しい。息子はしっかり頑張っていますよ」

 そんな渉さんを、父聰さんも頼もしげに見守る。

 聰さんは現在、JAおきなわ園芸事業協議会の会長も務めており、県内の生産農家をけん引する立場にある。

 聰さん自身もオクラやゴーヤーなど大規模に手掛ける。長男の翼さん(33歳)も独立し、グラジオラスや小菊などを栽培している。

 「農業を次世代に残すため、規模拡大を息子たちとも相談して決める。2、3年後には法人化も計画していますね。孫も8人。全員農家にさせるつもりだからね」

 

出荷時期に合わせた管理が大事

ハウス内の温度と湿度を確認する渉さん

 宮平家がトルコギキョウ栽培に取り組んだのは平成25年から。ハウスが完成するまで、渉さんは父のもとで栽培経験を積んだ。

 「管理作業の大半は、芽整理。1本の枝に花とつぼみをひとつずつ付けた形に仕上げるため、わき芽を摘む。同じ大きさに生長させるための大事な作業ですね」

 出荷の形をイメージしながら、一本一本細かい作業が続く。インタビュー中も、芽整理を行う渉さんの手は止まらなかった。

 「トルコギキョウの栽培適温は25度から28度。天気や温度計も見ながらの管理作業で、定植前には、JA指導員に土壌分析に基づいた施肥設計をしてもらい、入念に土づくりを行いました」

 

 ”いい土にいい苗を植えることがいい花を作る “という父の指導を守りながらの、無我夢中の今期を振り返る。

 「丈80センチ、花とつぼみがワンセットになった枝が3本付いたのが『秀』で、高値で取り引きされる。植え付けから収穫までの時期が台風シーズンと重ならないのも魅力ですね」

 トルコギキョウに沖縄農業の可能性を感じている渉さん。言葉の端々から情熱が伝わってくる。

 

需要に応えるモノづくり

出荷の形をイメージしながら、一本一本細かい作業を続ける

 達人の父がいて、同じ目標に向かう兄がいる。南部地区トルコギキョウ専門部会の一番の若手で、同じ年代の仲間との情報交換も楽しみの一つ。中学の同級生が新たに花き栽培を始めるなど、仲間が増えてきているのもうれしいそうだ。

 「結婚式に行っても、まずどんな花が飾られているかが気になります」

 市場に求められる花き生産に向け、探究心も欠かさない。月に一回は家族で集まり、営農相談を行う。これが家族の決まり事だそうだ。

 「生産するだけでなく、出荷してお金に換えるまでが勝負。最後まで気を抜かずに高品質なトルコギキョウを作っていきたい」

 目指すは沖縄一の農家。沖縄農業の可能性を信じる渉さんの目が輝いた。

 

 

父親の声

宮平聰さん

農業に一人前ということはありません。まず農業を好きにならないと駄目。私も子や孫たちが安心して農業ができる環境を整えていきたい。

 

 

JA担当者の声

南部地区営農振興センター

営農指導員

大城豊明

渉さんと兄の翼さんとは小学校のころからのつきあいです。部会では最年少ですが、細やかな心づかいで、将来が楽しみです。

 

 

 

JAおきなわ広報誌:あじまぁ

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