次代を担う 意気!域!農業人(はるんちゅ)宮古島市・重田康行さん

2018.02.01

新たに就農する人たちの『架け橋』になりたい。

着果棒に洗濯バサミ、病害虫には天敵。効率の良い農業を。

宮古島でトウガンを作り始めて5年。JA生産部会副部会長、JA宮古地区青壮年部平良支部では副支部長を務めるなどリーダーシップも発揮。先輩から惜しみなく教えてもらったことや自らの技術を、農業を志す若手に伝えていきたい。県内一のトウガン産地を引っ張る期待の農業人を紹介。

 

ハウスの中は土足厳禁

「着果棒」に洗濯バサミで目印

 宮古島市の市街地から県道を北上。街から外れるとすぐに、刈り取り間近の広大なサトウキビ畑が両手に広がってきた。畑の隙間からは、冬の晴れ間に照らされた宮古島の美しく青い海が見える。池間大橋の手前を海側に折れると、サトウキビ畑に囲まれたパイプハウスが仲よく並んでいた。
 ハウスの中を覗くと、何やら細長い棒が数えきれないくらい刺さっている。その中で作業に励んでいたのは、ガッチリとした体格ながら優しい笑顔が印象的な重田康行さん(44歳)。取材陣が中に入ろうとすると、「ちょっと待ってください」と康行さん。
 「ハウスは土足厳禁です。外からの病害虫を防ぐための栽培管理で、宮古島ではオーソドックスなんです」
 康行さんが早速、トウガンの栽培管理について教えてくれた。

 

 

 

当時の僕には楽園だった 

寄川指導員と生育状況を確認

 兵庫県出身の康行さんは、30代半ばまでエンジニアとして活躍。出張で全国各地を飛び回っていて、25歳で初めて宮古島を訪れた。
 「きれいな海に圧倒されましたね。仕事を終えると荷物を宅配便で送り返して、海に行ったりマンゴーを食べたり、当時の僕には楽園でしたね」
 それから康行さん、エンジニアの仕事も日に日にデスクワークが増え、毎日が窮屈に感じてきたのだという。
 「全国でも魅力的な場所はたくさんありました。でもやっぱり宮古島が忘れられなかったですね。海もそうですけど、初めて食べたマンゴーの味も忘れられなくて」
 宮古島の魅力に導かれた康行さん。初めて食べたマンゴーの味に惹かれ、『自分で作ってみたい』と一大決心。8年前に島への移住を決意した。
 「ベテランのマンゴー農家、辺土名忠志さんの下で2年間農業を学びました。マンゴーは木を植えてから収穫までに年数がかかるので、まずはトウガン栽培からスタートしようと思って」
 そして平成24年8月、意を決して50アールの土地とハウス3棟を購入。康行さんの農業が始まった。

 

栽培管理の工夫とこだわり

生物天敵のための植物も植える

 現在、パイプハウス5棟(12・5アール)でトウガンの栽培がメイン。最近はマンゴーやアスパラガスなど、他の品目にも挑戦し始めたそうだ。
 「トウガンは10月上旬に定植し、収穫は12月から翌年の6月ごろまで続きます。最終的には一つの株から50個、一つのハウスから1500個の収穫が目標です」
 ハウスのあちらこちらに立っている細長い棒について聞いてみた。
 「トウガンの実がなった目印の『着果棒』です。収穫するときに見つけやすいでしょ。他の人はもっと短い棒を使うんですけど、長い棒だと立ったままで刺せるし作業が楽。トウガンって腰の位置まで葉が生長するので、棒が短いと見えなくなりますしね」
 そんな着果棒をよく見てみると、先端に洗濯バサミがついているものがちらほら。聞くと収穫間近の目印だという。
 康行さんは病害虫防除にもこだわりがあるという。
 「3年前から生物天敵(虫)を導入しています。病害虫の『アザミウマ』を食べてくれる『スワルスキー』をハウスの中に放っています。多少コストはかかりますが、農薬散布は時間がかかるし、何より自然を利用するのが気に入っているんです」
 着果棒に洗濯バサミ、生物天敵、効率の良さを意識した幅広いアイディアが光る。
 「作業時間を短縮すれば、トウガン一つひとつの管理に時間がかけられるんです」
 そう話してくれた康行さん。就農5年目にも関わらず、県の品評会では金賞(県農業協同組合代表理事長賞)をはじめ3度の受賞歴も持つ。

 

良き伴侶、出会いは「パリ」

妻の咲子さん(㊧)と康行さん

 妻の咲子さん(39歳)とは、農家が中心となる宮古島の婚活イベント「パリ婚」(宮古島の方言でパリは畑の意味)で出会った。長女の美咲ちゃん(2歳)と長男の莉玖君(0歳)と子宝にも恵まれている。
 「移住して本当に良かったですね。農業は勿論大変ですけど、幸せですよ」
 はにかみながら話す康行さんに今後の展望を聞いてみた。
 「島では農業でも生活でも、先輩方をはじめいろんな人たちに受け入れてもらって、教えてもらいました。これからは新たに就農する若い人たちとの架け橋になりたいです。学んだことを伝えたいですね。それが宮古島への恩返しだと思います」
 優しい笑顔に、気負いのない熱い言葉。康行さんのトウガンが艶やかに輝いていた。

 

 

 

JA担当者の声
宮古地区
営農振興センター

寄川 真

温厚で真面目な方です。地域の活動にも積極的に参加され、周囲からの信頼も厚く、近い将来、宮古島の農業のキーマンになる方です。

 

JAおきなわ広報誌:あじまぁ

地域で頑張る農家を紹介する「農業人(はるんちゅ)」はあじまぁに掲載されています。
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