次代を担う 意気!域!農業人(はるんちゅ)南大東村・幸地聡さん

2018.04.01

島のサトウキビを島全体で支えあう。

自らの畑の収穫量アップに取り組みつつ「農作業受託作業」もこなす。

15ヘクタールという大規模なスケールでサトウキビを作り、かたわら、手が足りない農家の作業をサポートする「農作業受託作業」にも従事。サトウキビ農家みんなの力でサトウキビの島、南大東島の発展を支えていきたい、と静かな情熱を燃やす農業人を紹介。

 

製糖期まっただ中のサトウキビの島

広大なサトウキビ畑が広がる

 飛行機の窓から南大東島が見えてきた。マス目の様なサトウキビ畑の中に収穫作業中のハーベスターも見える。空港に到着して、島の中心部にある目的地の畑を目指し車を走らせると、道の両側には収穫を待つサトウキビ畑と収穫後の株出しの畑、収穫後春植え、夏植えのために掘り返された畑が出現し、どこか大陸的な風景が広がる。
 製糖工場の高い煙突からは白い煙が上がっていた。この時期、島全体がサトウキビ一色の観がある。
 植え付け・施肥・培土・除草・かん水・収穫と全行程が機械化している島内では、収穫はすべてハーベスターが担う。12月から3月までの収穫の時期、日が上ると同時にエンジン音が聞こえ、日が暮れるまで村内の15台のハーベスターが休む間もなくフル稼働。収穫後のサトウキビは、トラックで畑と工場間をピストン輸送され、製糖工場の広い構内はみるみる刈り取られたサトウキビが山をなす。

 

サトウキビと共に育ち生長した

収穫間近のサトウキビをチェック

 「祖父と父が戦後、久米島から移住して、サトウキビ作りを始めました。子どものころからよく手伝わされましたよ」
 広大な畑を見渡しながら話すのは今号の主人公、幸地聡さん(44歳)。暖かい日ということもあって、半袖姿のスマートないでたちは体育教師のような爽やかさだ。
 「中学卒業後、進学のため一度島を出ましたが、20代で島に帰り、父を手伝っているうちに農業の面白さに目覚めました。頑張った分だけ自分に返ってくる、それが魅力です」
 聡さんは10年ほどハーベスターのオペレーターをしながら父の元で働き、13年前に父の畑を引き継ぎ、独立。今では長年培った技術を活かし、収穫以外のすべての作業を、株出し管理機やトラクターなどの大型農機を駆使して行う。昨年は12・33ヘクタール(3万7298坪)で、1216トンを出荷した。大規模農家の多い南大東島でも、さらに大規模経営を展開している聡さんだが、今期はさらに15ヘクタール(4万5375坪)まで拡大したという。
 一人でこれだけの規模を管理できるのは、機械を駆使してこそ、である。

 

徹底した管理で高収量

大型農機を駆使して作業を行う

 聡さんは、徹底した管理で反収10トン超えの収穫を実現している。そのためには夏場にいかに生長させるかが大事で、まずは7月から10月までのかん水の徹底だ。堆肥や緑肥などを適宜投入するなど土づくりにもこだわる。 
 「早めに肥料を入れて、タイミングを見計らって水をやり、糖度が上がるようにするのがポイントです。糖度の高い品種は害虫もつきやすく、その対策も重要。手入れをちゃんとして、それを順々にこなしていくことが大事なんです」
 聡さんのまじめな性格が農業にも表れているようだ。 

 

島全体で作るサトウキビ

島で製糖され、県外へ出荷される

 自分自身の畑の管理作業のかたわら、高齢などの事情で農作業に負担がかかる農家の「農作業受託作業」も請け負う聡さん。
 「助け合って作業を進めていかないと、日々の作業が遅れて行き結果、この島の生産量が落ちることになると思うので、みんなで助け合って、島の発展を支えていきたい」と気負いなく語る。聡さんの働きぶりは委託農家からの信頼も厚いという。
 「農作業受託作業」はシステム化されていて、南大東支店には受託部が設けられている。機械化農業が浸透したこの島独自のユイマールのかたちである。

 

 

島全体で作るサトウキビ

島中で大型ハーベスターが活躍

 全戸数の約5割にあたる234戸がサトウキビを栽培している南大東島では、サトウキビ作りが島の多くの人々の暮らしを支えているといっても過言ではない。目下の課題は後継者不足に加え、干ばつ対策などの生産基盤の整備が急務だ。
 今年の島全体の収穫量は6万トンを見込んでいるという。作年は、天気に恵まれ43年ぶりの10万トン越えであったが、干ばつや台風が直撃した年には3万トンまで落ち込こんだこともあるという。島の地形上、農業用水の確保ができない地区が多く、天気まかせ、という状況だ。
 天滴チューブを導入するなど対策を講じているが、農家個々の力の限界も感じている。
 「天気任せの農業から脱却するためには、かんがい整備などの営農を支える土台づくりが必要だ。行政やJAとも連携して安定した生産基盤を確立させ、サトウキビ生産を若い世代が魅力を感じる産業にしていきたい」
 聡さんの描く、スケールの大きな、島のサトウキビ産業の未来像に、サトウキビの島の歴史の重みを感じた。

 

JA担当者の声

南大東支店
利用課課長

 聡さんは担い手のリーダーと言える存在です。農業に対する探究心が強く、農家を代表して意見や要望を伝えるなど、JAと農家の架け橋となっています。これからも彼のサトウキビ作りに期待します。

 

JAおきなわ広報誌:あじまぁ

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