次代を担う 意気!域!農業人(はるんちゅ)読谷村・嘉手苅正吾さん

2018.07.01

 

 

周年栽培で経営の安定を目指したい。

菊作り歴12年、今年初めて夏秋小菊づくりに挑戦。

 

妻と出逢い、「面白そうだ」と始めた小菊作り。栽培は体力勝負だと思っていたが、奥深い知識が必要で、頭を使うものだと痛感した。毎年のように違った苦労が訪れるも、信頼する仲間と支え合い、品質の高い小菊をつくる。今では施設栽培の強みを活かし、「夏秋小菊」に挑戦中。周年栽培で経営安定を目指す農業人を紹介。

 

きっかけは、彼女とのお付き合い

出荷時期のまるまる太った蕾

 国道58号を北上し、読谷村喜名のファーマーズマーケット読谷「ゆんた市場」に向かう。一帯は、平成18年に全面返還された読谷補助飛行場跡地として整備され、村の「先進農業支援センター」整備事業で、鉄骨製ビニールハウスや平張ハウス等農業施設が立ち並ぶ。

 梅雨だというのにもっぱらの快晴で、外気温は30度を超える中、作業仲間と一緒に現れた、今回の主人公、嘉手苅正吾さん(35歳)。 同センター内の鉄骨製ビニールハウス900坪(29アール)で夏秋小菊を栽培している。また、同センター内とその他(露地を含む)で3000坪ずつ、合計約6000坪(198アール)では秋菊中心に栽培に取り組んでいる。

 スマートな出で立ちの正吾さん、もともとグラフィックデザイナー志望だったとのこと。

 「専門学校でデザインを学び、デザイナーになるつもりだったのですが、どうもデスクワークは向かないな、と。仕事を探していたとき、たまたま交際を始めた彼女(現在の奥様)の父親、島袋健春さん(63歳)が菊栽培をしていて、手伝ってくれる人を探しているというので、面白そうだな、と自分が手を上げました」

 就農のきっかけを照れくさそうに話してくれた。

 

 

 

                     農業は体力も頭もフル回転

収穫は生育ごと1本1本ていねいに行います

 こうして仕事も決まり、1年後には結婚ということになった。それまで農業のことを何も知らなかった正吾さんだが、菊栽培歴40年という義父、健春さんにみっちり仕込まれた。7月に植えて、本土市場の需要が潤沢となる11月から4月まで出荷する秋小菊と大菊を主に栽培してきた。

 「始める前は、農業は体力が勝負だと思っていました。しかし、菊の育ち具合を確認したり、収穫時期を見据えたり、必要なときに必要な世話をするという作業の多さに驚きました。効率よく作業を行うためには、農業もただこなすのではなく常に頭を働かせなければならないと痛感しました」

 

 

夏秋小菊で経営の安定を

品質の良い小菊づくりに頑張っています!

 現在、義父の健春さん、義母の洋子さん、内田敦史さん(27歳)、島袋隼人さん(49歳)の5人で菊作りに取り組む。

 毎朝8時ごろ、ほ場で顔を合わせ、その日、やるべきことの確認をして、夕方5時ごろまで各自作業に励む。全員で同じ作業をするときもあるし、それぞれ別の棟で別の作業をすることもある。休憩時間はミーティングの時間でもある。

 夏秋小菊は、今年1月から初めて県外用に本格的な栽培に乗り出した。5月から1ヵ月間の収穫で、約2万本を出荷した。

 正吾さんが夏秋小菊で導入した品種は、「精さやか」という黄色の品種。比較的育てやすい品種であるが、生長がまばらで、暑さで汗があふれ出てくるハウス内での収穫作業にはとても苦労する。かろうじて黄菊だとわかる蕾の段階を見極めて、一本一本を丁寧により分けたものを鎌で切っては、傍らにおいた四輪車に積んでいく。ある程度まとまったところで水槽に立てて、水揚げをおこなう。この段階で収穫すれば、一週間後の花屋の店頭では理想的な開き具合になるのだという。

 「昨年は、5月ごろまで大菊を収穫していましたが、夏秋小菊と比べると品質に大きな差が出ています。植え替えなど手間は掛かりますが、断然、夏秋小菊栽培の良さを実感しています」

 夏秋小菊の栽培は、鉄骨や平張ハウスで栽培時期の台風被害を最小限に抑え、電照施設があり、自動かん水施設が設置されているから可能となる。強みを活かした冬場の秋菊、夏場の夏秋小菊と周年での作業が確立されれば、経営の安定にもつながると見込んでいる。

 

                    夏秋小菊の可能性に挑む

JAの営農指導員と小菊の生育を確認中

 全国的にみると、県外の高冷地産の夏秋小菊は6~9月が出荷の中心となる。沖縄県の秋菊との産地が切り替わる5~6月は供給が安定しない課題があった。全国的な出荷の端境期を狙って、JAおきなわ読谷支店花卉生産部会では平成28年から先進的に栽培に取り組んでいる。真面目で気さくな正吾さんは、今年、同部会の副部会長に選ばれた。産地として、期待の若手として、その活躍が大いに期待されている証だ。

 正吾さんに今後の目標と夏秋小菊の可能性について聞いてみた。

 「目標は反収アップ!そのために取り組むべきことは、病害虫の防除や、適期作業、スケジュール管理の徹底ですね。夏秋小菊栽培には手応えを感じています。来期も仲間と相談しながらぜひ挑戦したいです。私の師である義父に楽してもらえるよう、私が早く一人前になりたい。という気持ちはあります」

 長年菊栽培をしてきた義父や義母を気遣い、そして一緒にがんばる仲間とともに、夏秋小菊の可能性を広げるため日々菊作りにはげむ。

 

 

JA担当者の声

中部地区営農振興センター
農産部花卉指導課 名護 朝也

真面目で、一生懸命菊作りに取り組んでいます。また、気さくで話しやすく、先輩に可愛がられ、後輩からは慕われています。

 

JAおきなわ広報誌:あじまぁ

地域で頑張る農家を紹介する「農業人(はるんちゅ)」はあじまぁに掲載されています。
「あじまぁ」は組合員、地域とJAをむすぶコミュニティーマガジンです。各JA支店・JA関連施設(ファーマーズマーケット、Aコープ、JA-SS)よりお持ち帰りいただけます。

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