次代を担う 意気!域!農業人(はるんちゅ)読谷村・我謝亮太さん

2018.10.01

 

 

余力を活かし、規模拡大に挑戦したい。

コマツナに可能性を感じ、周年栽培を目指す。

 

菊栽培農家の二男が、30代を前に農業にふと興味を抱いた。「作るなら、食べられるものを」と思っていたところ、地産地消を推進する地元のプロジェクトの存在を知り、コマツナづくりに挑戦。コマツナづくりを通して、たくさんの人と出会い、大きな夢を描く農業人一年生を紹介。

 

夏場の葉野菜づくりに密着

夏の暑さでも青々と生長するコマツナ

 

 8月下旬の昼過ぎ、地元客と観光客で賑わう読谷ファーマーズマーケット「ゆんた市場」に立ち寄ってみた。葉物の中でも容姿端麗というイメージ

のコマツナが売り場に並んでいた。

 夏場にコマツナがどうやって栽培されているのだろうか。取材陣は、疑問に胸を弾ませながら取材場所に出発した。

 ゆんた市場から読谷村の南西部に位置する渡具知へ向かう。飛行場跡地を横断する新道から緑豊かな市街地へと入り、やがて集落近くの真新しいハウスに着いた。

 

 

収穫作業に余念がない

 ふわふわの土に、きれいなコマツナ

 雲の多い空模様だが日射しは容赦ない。ハウスの中をのぞき込むと、

 「午後は暑さで葉っぱがしおれてしまうので、この時季は、朝早いうちの作業が勝負ですね」

 我謝亮太さん(30歳)が声をかけてきた。今年から農業を始めたという、期待のフレッシュマンだ。

 夏場は5時には起床、5時半には収穫の作業を始めるという。朝にはみずみずしい茎葉も、午後にはハウスの暑さにうだってしまうのだ。

 「父・良雄(65歳)は長年菊を作っていて、子どものころは手伝っていました。20代は本土で働いたり、基地でアルバイトをしたりしていたのですが、農業を始めるのなら何か食べられるものを作りたい、と考えていました。その時、ハウス施設を導入できる一括交付金の話があって、父から土地を譲ってもらえることになり、話はとんとん拍子に進みました。タイミングですね」と亮太さん。

 冬場の葉野菜というイメージのコマツナだが、沖縄では夏場でも、播種から約30日で収穫できるのだという。

 「ハウス3棟で約150坪(5アール)あり、棟ごとに播種の時期をずらして、作業を効率良くしています。年間8、9回の収穫が可能で、現在6回めの収穫です。台風シーズンでも、ひと月で取り戻せる、と思うと気が楽です」

 手前のハウスは播種から10日、真ん中のハウスは17日、そして奥のハウスは収穫と、サイクルを調整している。土は吸水性のある島尻マージで、ハウス内の通路を歩くと、靴底からふわふわ感が伝わってくる。収穫の際は、一株ずつ根っこごと引き抜いては、茎葉部だけを傍らのハトロン紙にていねいに積んでいく。

 25~30センチが出荷時期で、収穫籠6、7箱(約60キロ)単位でJAに出荷し、袋詰めが行われ、県内の店頭に並ぶほか、外食産業や村内の小中学校の給食にも使われているという。

 

先輩方に学び、仲間と情報交換

病害虫駆除の様子

 目下、てこずっているのはキスジノミハムシやヨトウムシなどの病害虫対策である。夏場は病害虫が発生しやすく、雑草も生えやすい。ハウス内では雑草の手入れをしっかり行う。土が乾いていると、病害虫が活発に活動するので、朝と夕方を中心にこまめな水やりは欠かせない。夏場の葉野菜づくりは、冬場と比べると、ひと手間がとても重要となる。

 「農業に関してはド素人なので、知らないのが当たり前と開き直り、父にも指導員にも、地元の先輩にも、わからないことは片っぱしから聞いてまわっています」と屈託がない。

 「同時期に葉野菜の栽培を始めた仲間17人で、目揃い会という集まりを月に一度開いています。そこでもいろいろな悩みを聞いてもらい、お互いに情報交換をしています。中でも若手5人であれこれ競いあって、いい刺激になっています」

 

営農指導員と生育を確認する我謝さん

 目指すは規模拡大と周年栽培

 読谷村とJAゆんた支店では、地産地消にスピード感を持って取り組むべく、今年7月に「読谷村営農・知産地笑推進室」を立ち上げた。推進室では、JAと村の職員、県から1人が出向し、ワンフロア化で一体となって業務を行っている。

 また、国の一括交付金を活用して、平成28年度までに3000坪(100アール)のハウスの導入を行った。年間を通して安定的に生産できる環境の構築や地域の消費需要への対応など、「食と農」を通した地域振興を図っている。

 特に葉野菜類は、消費者の多様なニーズに応えるため、村もJAゆんた支店も今後生産を拡大させたい重要な品目として位置付けている。

 ハウスでの栽培が軌道に乗ったら、余力を生かして、露地での栽培にもチャレンジしたい、と意気込む亮太さん。読谷村ではまだ露地栽培の例がないそうだが、コマツナ生産の盛んな他の地域では行われているという。

 「ハウスの一棟分は3、4日で収穫が済んでしまうので、150坪では常に収穫待ちの状態です。いずれは週に6日は収穫できる、という規模まで増やしていきたいし、人を雇って、というところまで持っていけたら」

 自分に言い聞かせるように、大きくうなずいた。

 亮太さんの農業人の道はまだまだこれから。

 その熱き想いと行動力で、どんな困難にも立ち向かっていくに違いない。

 

 

JA担当者の声

ゆんた支店
 経済部地域振興班 島野 航希

担当してまだ2か月ですが、気さくで人当たりのいい方です。真面目で勉強熱心で、コマツナづくりのメンバーにいい刺激を与えています。

 

JAおきなわ広報誌:あじまぁ

地域で頑張る農家を紹介する「農業人(はるんちゅ)」はあじまぁに掲載されています。
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